「一人暮らしの親が心配だけど、遠方に住んでいて頻繁に様子を見に行けない」「自分も将来一人になったとき、誰が見守ってくれるのか不安」
このような悩みを抱える方が増えています。高齢化社会が進む中で、離れて暮らす家族への心配や、将来への不安は多くの方が感じていると思います。
見守り契約は、離れていても“見守られている”という安心感をもたらす仕組みです。
見守り契約とは何か
見守り契約の定義と仕組み
見守り契約とは、高齢者や一人暮らしの方が、専門家や事業者と契約を結び、定期的な安否確認や生活支援を受けるサービスです。契約者が元気で判断能力がある状態から始まり、継続的に関わりを持つことで、将来的な不安を軽減することを目的としています。
この契約は、契約者の自立した生活を尊重しながら、必要な時にサポートを受けられる「予防的な見守り」という特徴があります。
従来の成年後見制度との違い
成年後見制度は、既に判断能力が低下した方の財産管理や身上監護を行う制度です。一方、見守り契約は判断能力がある段階から始まり、日常生活の見守りに重点を置いています。
成年後見制度:判断能力低下後の財産管理・身上監護
見守り契約:判断能力があるうちからの生活支援・安否確認
任意後見契約との関係性
見守り契約は、任意後見契約と組み合わせて利用されることが多くあります。任意後見契約は将来判断能力が低下した際の備えですが、見守り契約はその前段階から継続的な関係を築くことができます。
多くの場合、「見守り契約→任意後見契約→(必要に応じて)法定後見」という流れで、段階的なサポート体制を構築しています。
見守り契約の具体的な内容
定期的な安否確認(電話、訪問、メール等)
契約内容に応じて、週1回から月1回程度の頻度で安否確認を行います。方法は電話が最も一般的ですが、メールやLINE、定期訪問など、契約者の希望や生活スタイルに合わせて選択できます。
緊急時の対応
契約者と連絡が取れない場合や、緊急事態が発生した際の対応について事前に決めておきます。家族への連絡、医療機関への連絡、場合によっては警察への通報など、状況に応じた適切な対応を行います。
生活上の相談対応
日常生活での困りごとや心配事について相談に乗ります。例えば、「病院の紹介をしてほしい」「介護保険の申請について知りたい」「詐欺の電話がかかってきて不安」など、様々な相談に対応します。
医療・介護サービスの情報提供
地域の医療機関や介護サービス事業者の情報提供、介護保険制度の説明、各種申請の支援など、高齢者の生活に必要な情報やサービスについてアドバイスを行います。
どんな人に向いている?契約の対象者とニーズ
- 一人暮らしの高齢者
配偶者を亡くされて一人暮らしになった方、生涯独身で身寄りが少ない方など、日常的に声をかけてくれる人がいない状況の方に特に有効です。 - 家族が遠方に住んでいる方
子どもが都市部に出て遠方に住んでいる、海外に住んでいるなど、物理的に頻繁な見守りが困難な場合に、家族に代わって地元での見守りを担います。 - 認知症や判断能力の低下が心配な方
「最近物忘れが増えた」「一人で判断するのが不安になってきた」という方が、将来への備えとして早めに関係性を築いておくことができます。 - 家族がいても「第三者の目」が欲しいケース
家族との関係が複雑な場合や、家族に負担をかけたくないと考える方、客観的な第三者の意見を求める方にも適しています。
見守り契約のメリット・デメリット
メリット
- 元気なうちから関係性を築ける
判断能力があるうちから継続的な関わりを持つことで、信頼関係を構築できます。いざという時にスムーズなサポートを受けられるのが大きな利点です。 - 判断能力があるうちは自立した生活を維持
過度な干渉ではなく、必要な時にサポートを受けながら、自分らしい生活を続けることができます。 - 家族の負担軽減
遠方に住む家族の精神的負担を軽減し、定期的な安否確認の報告により安心感を提供できます。
デメリット
- 費用がかかる
月額数千円から数万円程度の費用が継続的に発生します。サービス内容や頻度により金額は変わりますが、長期的な費用負担を考慮する必要があります。 - 契約相手の選択が重要
信頼できる契約相手を選ぶことが極めて重要です。資格、実績、人柄など、慎重な検討が必要で、選択を間違えると思わぬトラブルにつながる可能性があります。 - 法的拘束力の限界
見守り契約は民事契約であり、成年後見制度のような強い法的権限はありません。緊急時の対応に限界がある場合もあります。
契約相手の選び方
社会福祉士、司法書士、行政書士等の専門家
特徴:法的知識が豊富で、将来の任意後見契約への移行もスムーズ
選択ポイント:高齢者支援の経験、地域での活動実績、人柄との相性
NPO法人や一般社団法人
特徴:比較的費用が抑えられ、地域密着型のサービスが多い
選択ポイント:活動実績、財政状況の安定性、スタッフの専門性
民間事業者
特徴:サービスメニューが豊富で、24時間対応などの充実したサービス
選択ポイント:事業の継続性、サービス品質、費用の透明性
共通の選択ポイント
- 契約者との相性
- 地域での評判や実績
- 費用の明確さ
- 緊急時の対応体制
- 事業の継続性・安定性
契約時の注意点
- 複数の事業者を比較検討する
見守り契約は長期にわたる関係となるため、複数の事業者から話を聞き、サービス内容や費用、担当者との相性を比較することが大切です。安易に最初に接触した事業者と契約するのではなく、十分な検討期間を設けましょう。
また、自治体によっては民生委員が見守り訪問など実施しているところもあります。市町村役場の福祉担当の窓口にも相談してみてください。 - 費用の詳細を確認する
月額料金以外に、初期費用、交通費、緊急時の追加対応費用など、発生する可能性のある費用をすべて確認しておきましょう。また、料金改定のルールについても事前に把握しておくことが重要です。 - 家族との情報共有
契約内容や緊急時の対応について、家族や親族と事前に共有し、理解を得ておくことが大切です。また、家族の連絡先や役割分担についても整理しておきましょう。 - 契約期間と解除条件の確認
契約期間や更新方法、解除したい場合の条件や手続きについて明確にしておきます。特に、どちらか一方の都合で契約を解除する場合の取り決めは重要なポイントです。
まとめ
見守り契約は、高齢者の自立を支える重要な選択肢の一つです。この契約の最大の価値は、判断能力があるうちから専門家との信頼関係を築き、将来への不安を軽減できることにあります。
また、家族だけでは対応しきれない部分を補完する仕組みとして、家族関係をより良好に保つ効果も期待できます。遠方に住む家族の負担を軽減し、本人も専門的なサポートを受けながら自分らしい生活を続けることができるのです。
終活というと「人生の終わりに向けた準備」という重いイメージを持たれがちですが、見守り契約は「安心して自分らしく生きるための準備」と捉えることができます。
見守り契約に関心を持った方は、まずは地域の専門家や行政窓口に相談してみましょう。

